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もりぐち便り~守口市駅前のいち司法書士のつぶやき~

〇H28.12.19判決の影響?

 

 4月になって、急に暖かくなりました。3月は固かった桜の蕾が、一気に膨らんで、開花したようです。そういえば陽も長くなりましたね。

 新年度ということで、いろいろな変化があった方も多いと存じます。本年も頑張っていきましょう!

 

 H28.12.19判決といえば、関心がない司法書士は居ないのではないかと思うほど重要な、相続預金についての判決ですね。

 この判決により、相続財産に預金があった場合の、実務上の対応が大きく変わったようです。預金債権は可分債権ではない、という判断なのですが、これは平たく言うと、「相続人全員のハンコが揃わないと、1円も出金できないよ。」という状態になったということです。これは、実体上、かなり大変なことなのですね。

 というのは、一人でもハンコを押してくれない相続人がいると、葬儀費用など必要な支払いさえ被相続人の預金から出金することはできない、ということになるからです。

 相続財産を受け取れない、というだけではなく、被相続人が残した債務の支払いはしないといけないのに、残した預金は受け取れない、という事態になりかねないのですね。

 以前なら、全員のハンコが揃わないときは、例えば相続人の一人が葬儀費用のために被相続人の銀行預金から(その相続人の法定相続分を上限として)出金することができたり、相続人の一人が銀行を相手とする裁判をして、自身の法定相続分の払い戻しを求めることができたりといった手続きがありました。が、それらの手はもう使えなくなりました。

 前出の判決の補足意見で、遺産分割事件を本案とする仮分割の仮処分の申し立てにより、債務の弁済や被相続人に扶養されていた者の生活費など急迫に必要な支払いのために仮に預金の分割を求めることができる、というご意見もありましたが、仮処分の必要性ってどの程度疎明すればいいのか、また、担保は必要なのか(担保が立てられるなら必要ないのでは、という気も)、と考えたら、ハードルが高いです。

 また、相続債権者としてもしくは相続人の債権者として、被相続人の預金債権を差し押さえることも、困難になるのでしょうか。

 例えば被相続人に対して金銭債権を持っている場合、金銭債権は可分債権なので相続人それぞれ個別に請求できますが、相続人の一人が応訴できない状態であったら、被相続人の引き当て財産である預金にはまったく執行できなくなるのでしょうか?(cf.不動産は、遺産分割未了であっても、債権者代位で法定相続による相続登記をしてから持分を差し押さえる、ということができる。あくまで登記の先後で決まる。)遺産分割が未了であるとか、相続人の一人が行方不明とか、債権者にはまったく落ち度のない理由で、引き当て財産を諦めないといけないのでしょうか。また、相続人にとっても、被相続人の相続預金があるとわかっているのに、ハンコが揃わないという理由で、自分の財産からの持ち出しを余儀なくされるのでしょうか。せめて、不動産のように、差し押さえと遺産分割の先後で決する(遺産分割までは法定相続分で差し押さえ可。)等、手立てして欲しいと思います。

 この判決により、また実務上いろいろな問題が出てきて、そのうち方向性が決まるのだと思いますが、しばらくは注意が必要ですね。


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2017-04-04 14:53:21 | RSS