○山椒大夫
森鴎外の「山椒大夫」を読みました。
これは中世の説経節の「さんせう大夫」を原話として森鴎外が書いた小説ですが、この「さんせう大夫」は、浄瑠璃や「安寿と厨子王」という児童文学などでも原話として使われている、とても高名な演目です。
安寿と厨子王という幼い高貴な身分の姉弟が、父に会いに行く旅の途中で人買いにさらわれて母と離れ離れになり、奴隷として過酷な生活を余儀なくされます。しかし安寿は弟を自分の命を懸けて逃亡させ、逃亡に成功した弟はやがて身分を取り戻し、自分たちを過酷な運命に陥れた人々に復讐を果たし、母と再会します。
原作の「さんせう大夫」では、安寿たちが受けたひどい仕打ちなど、いわれなき迫害を受ける者の悲哀と、身分を取り戻した厨子王による迫害者に対する復讐劇とに焦点をあてています。
それに対して森鴎外の作品は、家族愛に焦点を置いた作品になっています。
この違いは、書かれた(演じられた)時代背景によるものでしょう。中世の日本は厳然とした身分差別があり、いわれなき迫害を受ける者が聴衆の多くであった。森鴎外が執筆した大正時代は、日本の一般市民が自由と民主主義を求めて動いていた時代です。
そして現在、私たちは自由と民主主義を手に入れました。そして、誰からもいわれなき迫害を受けることはありません。人間はみな、平等であるからです。
自分以外の誰かを、自分の思い通りにするなんてことはできません。相手が誰であっても、たとえ子どもであっても、です。自分も相手も同じ人間であり、同じ人権を持っていることを、常に互いに意識しなければならないと思います。
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